ワルシャワに初めて来た日のことは今でもよく覚えている。
6月の終わりだったが肌寒く、滞在した3日間、ずっとどんよりした天気だった。
空港から宿に向かうタクシーから街を眺め、まず思ったのは
「人がいない」ということだった。
今、考えるとそんなに人がいないわけはないのだが、そういう印象が記憶として残っている。
うすら寒い曇り空に、ひと気のない街。どう考えても明るいイメージからは程遠いのに、どういうわけか私はこの街がとても気に入ってしまったのだ。
そしてなぜかこの街に‟色”というものを感じた。
30年ほど前、旧共産圏の街を訪ねた時はどの街もグレーな印象が先に立っていたが
ワルシャワには色があると感じた。
それはたぶん視覚でとらえたものではない。
五感でとらえた色とでもいおうか。
そしてその彩りはワルシャワの豊かさを反映している。
どうやらその彩りの豊かさにすっかり魅せられてしまったようだ。
何の後ろ盾もなく、何の保証もなく
この国が、この街が好きというだけでワルシャワに拠点を移してしまった。
文字どおり、大きな賭けだ。
「この国のどこがそんなに好きなのか」と、ポーランド人にも日本人にもよく聞かれる。
実のところ、自分でもよくわからない。
ただここは、ようやく見つけた自分の場所だ、と感じる。
物心ついた時からずっと私は、「自分は間違った場所にいる」という感覚があった。
地方から東京に出れば変わるかと思ったがそうでもなかった。
海外はどうか?とオーストラリアに滞在してみたがやはり違った。
「幸せの青い鳥は実は目の前にいる」という話のように、目の前にある日本がやはり自分の場所で、
間違った場所にいるという感覚が間違いなのでは?と思い込もうとしていた。
ほぼほぼ諦めていたのである。
今さら、探していたものが見つかるなんて思いもしなかった。
私にとってポーランドは、新天地を発見したというより、
長い旅を経て、ようやく自分の場所に戻ってきたというような感覚だ。
「若い子みたいに夢を追いかけるなんて」とか
「大人げない」とか
批判的な目で見られることはかなり多いのだが、
ほしいものが見つかったからには追いかけずにはいられない。
たしかに子供っぽいかもしれない。
でも‟大人げない”ことをするのは
実はかなり楽しい。
下記の写真はワルシャワで開催されたフェア、マーケット。
11月の後半あたりからワルシャワでは、小洒落たグッズのフェアがあちこちで開催されている。
一般的にはポーランドはあまりお洒落なイメージがないかもしれないが、
ところがどっこい、実はセンスのよいモノたちがあふれている。
特に年末はクリスマスプレゼント用ということもあるのだろうが、 雑貨好きには楽しすぎるイベントが盛りだくさん。
コスメ好きには天国なイベントがあるかと思えば、雑貨好きにも天国なイベントもある。
つまりワルシャワは‟天国がいっぱい”な場所なのである。
お気に入りイベントの一つ「 Targi Rzeczy Ładnych」は
Google翻訳にかけると「Nice Things Fair」と表示される。
「お洒落グッズ・マルシェ」とするとイメージがわきやすいのではないだろうか。
雑貨、コスメ、家具、食器など、ちょっとセンスのよい様々なショップが出店している。
「Targi Plakatu」には昨年から友人のダーシャが出展しており、楽しみが増えた。
毎年、ちょこっと彼女の作品を買っていきたい。
昨年は店番を手伝ったので、ダーシャがポスターをプレゼントしてくれた。
同じモチーフのポストカードとあわせてみた。
貼り方がちょっと歪んでる?(汗)
ポーランドは若い人でも家を購入する人が多い。
私の周りでは、30代半ば以降の友人たちはほとんど持ち家のようだ。
ドカンとすべて新品でそろえるのではなく
家を買ったらお気に入りのショップで少しずつオシャレな小物を増やしていったり、
自分好みの空間に作り上げていくのが楽しみらしい。
こういうところに、ワルシャワの豊かさを感じる。