ポーランドではクリスマスイヴをWigilia(ヴィギリア)といい、1年で最も重要なイベントの一つ。この日は祝日ではないが、ほとんどの店は午後イチくらいで閉まってしまう。
とても重要な日なのに祝日でないのは不思議な気がするが、
Wigiliaの晩餐を用意していて「あ、あれ買い忘れた」なんてことがあっても朝ならまだ間に合う。
そう考えると便利ではある。
Wigiliaというのは家族の集会だ。ボーイフレンド/ガールフレンドなら呼んでもらえるが、ただの友達を気軽に誘うという感じではない。
私のように外国人で、パートナーもボーイフレンドもいない人間は、参加すべき家族がない。
が、クリスマスを一人で過ごすのは今に始まったことではないし、自分としてはいっこうに構わない。
しかし、ポーランドでは Wigiliaを一人で過ごすのはよろしくないらしい。
Wigiliaに一人でいることがポーランド人にバレると「それはよくないことだ」と言われてしまう。
というか、怒られる。
だったら事前に誘ってくれよ、誘わないんだったらほっとけ―、と思うのであるが。。。
自分としては一人で過ごすことは全く問題ないのに、「悪いことだ」と言われるのは気分がよろしくない。
そして「Wigiliaに一人でいるのはよくないから、今から家に来なさい」となるわけだが、これもちょっと複雑な気分。
招待してくれるのはありがたいのだが、これは「Wigiliaにひとりぼっちのかわいそうな人を救わなければならない」というキリスト教的な考えから来ている。
つまり私は「かわいそうな人枠」で招待されているわけで、これもなにかすっきりしない。
私は好きな国で楽しく暮らしており、一人でいるのが好きだからおひとり様を貫いているのである。勝手にかわいそうな人枠に押し込められるのはやっぱり気分がよろしくない。
そして wigiliaの晩餐への飛び入り参加は、なんというか アウェイ感満載。
ほぼ見ず知らずの人たちのかなり私的な集まりに突如参加するわけだから、当たり前といえば当たり前だ。
もちろん皆さん親切なのだが、それがいっそう家族の団欒を邪魔しちゃってるようで申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
日本人の感覚的には、一人でいるより、よそ様のお邪魔をする方がよほどよくないことだ。
しかし今年はコロナのため、一人で過ごすと言っても怒られることはない。
むしろ、この状況でお年寄りから子供まで一堂に会して晩餐を楽しむという方が「よろしくない」ことではないのか?
かなりリスクの高い行動だと思うのだが。。。
いつもはポーランド人としては珍しいくらい神経質にリスク管理をしている友人まで、実家に帰ってWigiliaの晩餐をするといっていた。
彼女だけではない。私の友人・知人はほとんど家族でWigiliaの晩餐を囲んだらしい。
若干、人数は抑えめだったようだが「いつもは8人集まるところを今年は5人」にした程度。
リスクはあまり変わっていない。
ロンドン在住の知人によると、イギリスでは直前に規制強化となり、実質的に家族みんなで集まってクリスマスディナーというのはできないようだ。
国民は不満タラタラらしいが、規制で縛らないとクリスマスの晩餐は止められない。
欧米人にとってクリスマスは特別なものだから、自粛に任せてはどうにもならないのだ。
さて2020年のWigiliaはオンライン開催にした。前日に決めたので準備不足は否めなかったが、それでも日本、カリフォルニア、ロンドン、ワルシャワの友人たちとコネクトできた。人種もいろいろだ。ポーランド人、ウクライナ人、アメリカ人、イギリス人、日本人。
そもそも「Wigiliaは家族で過ごすもの」という習慣は、だれしも家族がいて当然、という前提で成り立っている。若い人なら親がいるし、お年寄りなら子供や孫がいる。兄弟姉妹がいる人も多い。
しかし単身で暮らしている外国人は、少なくともポーランドには家族はいない。
家族がいない外国人向けに、Wigiliaの晩餐に招待してくれるポーランド人の家族をあっせんするプロジェクトもあるようだが、
私としてはWigiliaを一人で過ごすという選択肢を尊重してほしいと思うのである。