意外と簡単。ヨーロッパのコロナワクチン接種事情

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ポーランドではコロナワクチン接種はどうなっているか?
5月10日のデータでは合計接種数は約1376万、人口比でワクチンを1 回以上接種したのは約27.5%、必要回数のワクチン接種が完了した割合は約9.8%となっている。

EU平均よりはやや劣るが、それなりに進んでいる印象だ。

がしかし、ニュースサイトによると80歳以上の人の接種率は約57%だという。
ワクチン予約の対象となっても登録・接種しなかった高齢者が大勢いるらしい。
一日あたりの感染者数は急減しているわりに死亡者数が減っていないのはその影響なのだろうか。
その代わりポーランドでは20代30代という若年層への接種が進んでいる。

接種の予約をするには主に4つの方法がある。
●専用の番号に電話をする
●ウェブサイトからアクセスする
●接種場所のマップが公開されているので、希望の場所に直接電話をする
●SMSで予約する

外国人でも、PESELという日本のマイナンバーのようなものを取得していれば上記の手順で予約できる。PESELを取得していない場合はちょっと手続きが面倒になるが接種は可能だ。


年齢層による接種登録スケジュールが設定されていたが、5月10日以降は18歳以上なら年齢層に関係なく予約登録が可能となった。

SMSが手軽そうなので、これを試してみた。
ごくごく簡単。
ポーランド語のみであるが、Google翻訳を使えばよいし、そもそもそんなに複雑なことは書いてない。
指定された日時でOKか迷っている時間を含めても5分くらいで完了。


しかし翌日、予約確認SMSが届き、接種ワクチンはアストラゼネカだという表示が。

アストラゼネカのワクチンと言えば、血栓リスクが問題となり、高齢者限定にしたり、使用停止にした国もある。南ア変異株には効きが甘いともされている。

もともと私はワクチン接種に関しては、拒否とまでは行かないが「あんまり気が進まない派」である。
ワクチン接種にはリターンだけでなくリスクもあるが、それをどう見積もるかはとても難しいと思うからだ。

しかしワクチンパスポート的なものが導入されれば「接種していないことのリスク」が大幅にアップする。

特に私が危惧したのは、ポーランドを一度出国し、再入国しようとしたときにワクチン接種していないことを理由に入国拒否される可能性だ。
これは相応にありえる、
と考え、接種予約をした。


が、アストラゼネカとなると「身体に与える影響」のリスク値が上がる。血栓発症は数万人に一人の確率だとしてもそれに当たらないとは限らない。変異株への効果が低いとされているのも気になる。もちろん世界の多くの国で使用されているのだから悪いものじゃないのはわかる。が、選べるなら他のを選びたいというのが本音だ。そもそも注射嫌いだし。。。
一気にワクチン接種のモチベーションが下がる。

とりあえず接種ワクチンを変更することに。

わざわざアストラゼネカだと表記してあるというのは
ゆるめのリスク勧告とも受け取れる。
「文句があったら言ってね。なければリスクを許容したとみなします」的な。

変更はSMSではできないのでワクチン予約専用ダイヤルに電話する。
まずは自動音声が概要を説明し、用件によって1~3までの番号を押すように案内する。
英語対応をしていないか淡い期待を抱いていたが全面ポーランド語
まあ覚悟はしていたよ。

そんなに複雑なことを言っているわけではないし、大まかに理解できれば操作できるが、ポーランド語が全くわからない場合はキツイかも。

私の電話に対応したオペレーターの女性に、英語できますかと聞くと「ちょっとだけ」と言う。
ポーランド人の「英語ちょっと」は、日本人的には「十分うまい」レベルなことが多いのだが、念のため予約日時の確認はポーランド語でトライ。
●月●日はスムーズに言えたが、●時●分でカミカミ。
40分=「czterdzieści」と言うべきところを「czterdziesiąt」と言いそうになり、
いや、それ違うと一人ツッコミ。


「頭ではわかっちゃいるんだけどうまく言葉が出ないんだよねー」と言い訳すると
「わかる。私の英語もそうよ」

とオペレーターさん。
2人でアッハッハーと笑いながら、和やかな雰囲気で予約変更完了。

この接種予約システムはなかなか使い勝手がよい。PESELと電話番号があれば予約できるし、チャネルもインターネット、SMS、電話が用意されている。電話は24時間体制の専用番号のほかに、接種会場に直接電話することもできる。空きがあれば当日でも接種可能なようだ。何ともフレキシブル。
予約が面倒だとその時点でモチベーションが下がるから、そのあたりはよく考えられている。政府の本気度が感じられる。

さらに5月1日~3日の連休には、「この連休にワクチン接種をしよう!」というキャンペーンが展開され、全国の指定ポイントで予約なしの接種も実施された。
早朝から6時間並んでJohnson & Johnsonのワクチンを接種したとFacebookに投稿していた友人もいたし、わざわざワルシャワからBiałystokまで行った友人もいた(すいていたらしい)。
ニュースサイトによると、約4.1万人がこのキャンペーンでワクチンを接種したという。


コロナに限らず、もともとポーランドはワクチン接種に懐疑的な人が多いらしいが、
現在はむしろ「ワクチン接種はCool」というような雰囲気になっている。

長蛇の列に並んだり、わざわざ車で遠方まで出かけてワクチン接種をした友人にその理由を聞いてみると「海外旅行に行きたいから」だという。
これは「ワクチンパスポート」が制定された場合に備えてのことだ。

海外旅行とまでは行かなくても”自由を得る”ためにワクチンを接種する人は多い。
が、ワクチンを打てば感染しないわけではない。感染予防効果が期待できるという研究報告もあるようだが、効果が証明されているのは、発症リスクと重症化リスクに対して。

ワクチンは万能ではないのだ。

とはいえ、ワクチン打ったらコンサートに行こうとか、パーティーやろうとか、もっと人と会おうとか考えている人は多い。
「My規制緩和」の理由付けとしてワクチンはうってつけなのだ。


この1年は感染者が増えると規制を強化し、収まってくると緩和する、この繰り返しだ。
しかし今はもう、強化しても以前のような緊張感はない。かといって緩和されても好き勝手できるわけではない。
ワクチンは、この1年頑張った自分をちょっぴり甘やかすためのよい言い訳なのだ。

ところで、「ポーランドでは20代30代という若年層への接種が進んでいる」と前述した。近隣諸国でも同様なのかと思っていたらそうではないらしい。例えばドイツなどでは、まず重症化リスクの高い高齢者へのワクチン接種を重点的に進める方針で、若年層がワクチン接種をできるのはまだ先。そこでドイツ在住のポーランド人がワクチン接種を受けるために里帰りするケースが増えているとか。ワクチン帰省?


実際に私の周りにもそんな人がいた。ドイツからワルシャワに1週間ほど滞在中の20代の知人は「明日ワクチンを打つことになった」と言っていた。ちなみに彼はドイツ生まれのドイツ育ちだが、お母さんがポーランド人なのでポーランド国籍も保有し、ポーランド語も堪能である。
ドイツ人からしても、ポーランドの予約システムはお手軽らしい。


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