東京オリンピックに出場するため来日したベラルーシの陸上選手が強制帰国されそうになり亡命を希望、ポーランドが人道ビザを発給したというニュースが注目を集めている。
日本では「そもそもベラルーシってどこ?」な人が多く、まさにびっくり仰天なニュースだと思うが、ポーランドに住んでいると「さもありなん」な事件という気もする。
ベラルーシでは昨夏の大統領選でルカシェンコ氏が再選されたが、選挙に不正があったとして大規模な抗議活動が起きた。 ルカシェンコ政権は反対派を厳しく取り締まっているのだが、その弾圧っぷりがすごい。まさに「欧州最後の独裁国家」。悲惨なニュースは日常的に目にしていた。
もともとポーランドにはベラルーシからの移民が数多くいたが、反対派への弾圧が強まって以降、ベラルーシ人を難民認定し受け入れている。
スタートアップ業界も、海外からポーランドへの会社移転をスムーズに行うため「Soft Landing」というプログラムを展開したが、これは主にベラルーシ人を対象にしている。
このような背景があるので、ポーランドに住む身としてはセンセーショナルなニュースではあるが、あまり意外な気はしなかったのである。
ポーランドがベラルーシの反政権派に優しいのは、ロシアに対する牽制の意味もあるとされる。ルカシェンコ政権はロシアを後ろ盾にしているからだ。
日本ではポーランドもロシアも”旧共産国”とひとくくりにされ、”お仲間”と見なされがちだが、そんなことをポーランド人に言ったら激しく怒られることだろう。
ポーランド人の対ロシア感情はすこぶる悪い。
一方、ウクライナやベラルーシからの移民は、少子高齢化に悩むポーランドにとっては貴重な労働力。言葉や文化も似ているのでインテグレーションもスムーズ。永住権、市民権を取って定住する人も多い。
ベラルーシ出身の友人はポーランドの市民権を取った時、「今日からオフィシャルにポーランド人になった」と嬉しそうに話していた。
ところで私は以前、ベラルーシの首都ミンスクに観光で行ったことがある。2018年8月のことだからちょうど3年前だ。ビザなし渡航ができるようになったということもあり、ミンスクに行きたいと言っていた友人と3泊4日の旅に出かけたのだ。
その時のミンスクの印象は「ソ連っぽさが残る街」。
私は旧ソ連時代にシベリア鉄道横断の旅をしたことがあるのだが、街の造りや、前時代的な店が残っていたりして、ちょっと懐かしいような気持ちになった。
その時すでにルカシェンコ政権であったわけだが、観光客として街を散策する限りでは独裁政権を匂わすようなものはなかった。
実のところ「観光地としての魅力はイマイチ」と感じたが、今から思えばよい時に行ったものだ。
のんびりと散策していた場所が、2年後には惨劇の舞台となるとは当時は想像もつかなかった。
今はもう、とても観光で行けるような場所でなくなってしまった。
2018年8月のミンスクの街↓