ポーランドではソファーベッドがある家がやたらに多い。
普通のソファーかと思ったら、ちゃんとベッドになる。
リビングにあるソファーはたいていの場合、ただのソファーではなくソファーベッド。
「ポーランドにおけるソファーベッド普及率」みたいな数字があったら見てみたい。
きっとかなり高い数値が出るはずだ。
一軒家でゲスト用の部屋がある場合を除き、ポーランド人のお宅に遊びに行ってソファーベッドがなかったことはない。
「一家に一台ソファーベッド条例」でもあるのかと思うくらいだ。
以前、 Wrocławを訪れた時、友人のママの家に泊めてもらったことがある(友人は東京在住)。
「いらっしゃい。よく来たね」と通されたのは、書斎のような部屋。
「ちょっと狭いけどここを自由に使ってね」と言ってくれた。
部屋にあったのはデスク、イス、本棚、それとシングルサイズのソファー。70年代風のちょっと古めかしい感じのソファーだ。
まさかこれはベッドにはなるまい。軽く構造をチェックしても普通のソファーにしか見えない、と思っていたのだが
夜にはベッドに変身するではないか。
「なんとお前もか!」と心の中で叫んでしまった。
こちらで部屋探しをした時も、やはりソファーベッドは‟標準装備”のようだった。
ワルシャワでは、部屋は賃貸も分譲も家具付きなのが一般的。
単身、あるいはカップル向けの物件だと、ベッド一台にソファーベッド1台、あるいはソファーベッド2台ということが多い。
ちなみに私の家はKawalerkaと呼ばれるスタジオタイプの部屋だが、ダブルベッドになるソファーベッドとシングルサイズのソファーベッドの2台ある。
ポーランド人はわりと気軽に人を泊める。そういう習慣らしい。
単身者向けの物件でも、人を泊めるための家具がフツーに用意されているのは面白いなと思う。
ポーランド人、人を泊める気満々なのである。
私は日本に住んでいた時、人を自宅に招待するという習慣が全くなかった。
東京の中心の人気の街に通算10年ほど住んでいたが、友人が来たことがあるのはたぶん5回以下。
「家は仕事場でもあるから」などと言い訳をしていたが、シンプルに人が家に来るのが好きじゃなかったのである。
人様をお招きする時は家は完璧に整えておかねば、
という無言のプレッシャーが日本にはあるように思う。
でも完璧にするのは難しいし、面倒くさいから結局、呼ばない。
しかし、ワルシャワに拠点を移してから、なぜか人を家に呼ぶことに抵抗がなくなった。
友人たちとBarで軽く飲んだ後、
「うちはこの近くだから寄ってく? 自家製Nalewkaあるよ」
なんて流れになるなど、東京では考えられなかった。
知り合ったばかりの二人旅の女性が帰りの飛行機に乗り遅れた時
「狭くてよければ家に泊まります?」
とごく自然にそんな言葉を口にする自分にびっくり。
どうも知らないうちに「血中ポーラン度」が上昇していたようである。
余談ではあるが Nalewka (ナレフカ)とは、ウォッカやスピリタスに果物などを漬けこんで作る酒のこと。「ポーランド版 梅酒」とでもいえば想像しやすいのではないだろうか。
Nalewkaのバリエーションはいろいろあり、現在、拙宅ではアプリコット、サクランボ、イチゴ、プラムのNalewkaを仕込んでいる。
私はたくさんは飲まないのでちょっとずつ。
ワルシャワに住んでいる若い人が自宅で Nalewka を作っているというのはあまり聞かない。
Babcia(ばあちゃん)とかママが作るイメージである。
そういえば先に述べたWrocławの友人のママの宅でも、Nalewka Malinowa(ラズベリーのナレフカ)をごちそうになったっけ。